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駒にクリップ
確か、以前、ハッチンスの論文を読んでいるときに見かけたと思うのだが、駒にクリップをつけることで音が良くなるという研究者がいるとのことだった。

すっかり忘れていたが、糸川氏の本にもその話が出てきて思い出した。

ハーバード大学のサウンダー教授である。
教授は、ハイフェッツを研究パートナーとして、バイオリンの音響研究をしていたのだが、その中で、駒にペーパークリップを挟むことで、バイオリンの値段が数百ドル上がったのと同じ効果があるという話を展開している。
また、ストラディバリと、ペーパークリップを挟んだ普通のバイオリンを聴衆から見えないようにした上で、ハイフェッツに弾いてもらい、ブラインドテストをしたところ、聴衆は全く区別がつかなかったということだ。

結局、「いい音」に本来的な基準がないというのが問題なわけで、求めるべきものを明らかにせず、ひたすら音の追求をするのは、幻を追いかけるような気になるものだ。

サウンダー教授の方法は簡単なので、eagleで試してみよう。

クリップ


eagleの駒のE線側に、ペーパークリップを挟む。

・クリップを挟んだ音

・クリップを挟まない音

明らかに、クリップを挟むと、落ち着いた音になる。これは、eagleの駒が多少削りすぎなことも影響しているのかもしれない?

糸川氏の論文のほうは、本よりもずっと分かりやすく、ハイバーの目的も明らかだった。要するに、低音側の表板の振動パターンの節となるところに、バーを配置することで、低音モードには影響させずに高音側のモードの周波数を高くすることを狙ったものだ。狙いは分かるし、原理も分かるのだが、先ほどの議論ではないが、それでは、「何がいい音なのか?」という観点が抜けたまま、頻出の音程部分の音圧を上げることは、果たして「良い楽器」という観点からみて、正しい解なのだろうか?
メニューインはE線が良く出ると言ったそうだが、良い音かどうかの論評は本には書かれていない。

これと違う話だが、糸川氏の論文の方に面白い見解が書かれていた。それは、倍音の合成での音と基音の関係である。前に、ストラドの周波数特性を見たときに、基音が強く出ているという解析をしたが、糸川氏の論文では、たとえば、3倍音と2倍音の合成音としての基音相当周波数成分が聞こえるような話が出ている。もし、通常のバイオリンでは、本来の基音が小さく、2倍・3倍の音の差音が聞こえているとすれば、「ストラドはピアニッシモがホールの端まで聞こえる」という評は、基音の大きさの違いを表しているのかもしれない。
高次の倍音は減衰が大きいので、当然、ホールの端までは届きにくいためである。
これも、含め、論文は色々と参考になる話が多かった。が、基本的に紀要論文であり、詳細な査読は入っていないので、グラフの扱い、議論の展開など、もう少し踏み込んで欲しい部分もあったが、書かれた年代を考えればそんなものかもしれない。

論文は、糸川・熊谷, ヴァイオリンの製作に関する研究, 東京大学生産技術研究所報告 第3巻1号, pp.1-19, 1952
である。図書館などで、簡単に手に入る製作関係者は一度目を通されると面白いかも?
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【2006/12/05 22:19 】 | バイオリン製作(一般) | コメント(2) | トラックバック(0) | page top↑
ヒデオ・イトカワ号
昼休み中に読み始めた
八十歳のアリア―四十五年かけてつくったバイオリン物語 / 糸川 英夫
であるが、結局、最後まで読みきってしまった(本を読むのも仕事のうち・・ ^^;)

音響学的な計算で厚さの分布を出したということだが、結論的には、先日の私の仮説と近いところがあった。ストラディバリを離れ、数式でモデル化して構造を決定していると言っているが、数式化できる部分と、数百の木材を叩いて、良さそうなものを選択するという極めてアナクロ的な部分が混在しているのが面白い。

数式に載せるためには、モデルの多くの部分を単純化する必要があるはずで、木材のような自然材の複雑さをどのように取り扱ったのかは、この本では明らかではない。が、東大の生産技術研究所の研究報告に論文を書いているということなので、職場の図書館を経由してコピーを取り寄せてみようか・・(職権乱用か? ^^;)
追記:念のためチェックしたら、職場の図書館に置いてあって、コピーを一部とってきたところだ

しかし、木材のエージング処理については、比較検証をしていないし、データも取っていないという、およそ科学者らしからぬ切れの悪さだ。(データは取ったが違いが分からなかったのではないだろうか・・?)

最後のところで、中澤宗幸氏、中澤きみ子氏とのつながりが書かれていて、点と線が完全につながったのだ。

今までハッチンスの論文などこまごまと集めてきたが、数学的解析も必要かもしれないと、次の本を購入候補に上げておこう♪
楽器の物理学 楽器の物理学
N,H. フレッチャー、T.D. ロッシング 他 (2002/10)
シュプリンガー・フェアラーク東京

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基礎音響学―振動・波動・音波 基礎音響学―振動・波動・音波
吉川 茂、藤田 肇 他 (2002/02)
講談社

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【2006/12/05 15:57 】 | バイオリンの本 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
バイオリン・リペアガイド
Violin Repair Guide: Illustrated Step-by-Step Instructions for Bow Rehairing, Repair and Restoration of the Violin, Viola, Cello and String Bass Violin Repair Guide: Illustrated Step-by-Step Instructions for Bow Rehairing, Repair and Restoration of the Violin, Viola, Cello and String Bass
Michael Atria (2004/08/15)
Hal Leonard Corp

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洋書であるが、安価であり、毛替えの様子まで写真付きで載っているらしい。

他のついでがあれば、一つ購入したいリストに入れておこう。

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【2006/12/05 08:47 】 | バイオリンの本 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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